DX対談DX Conversation

株式会社ダイコーIWS
代表取締役社長

山田 茂之

株式会社 L is B
代表取締役社長CEO

横井 太輔

Vol. 2

企業がDXに取り組むためのスタンスとは

近年、「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」が注目を集めていますが、大興グループでは2020年から独自のサービスとして、DDX(ダイコー・デジタル・トランスフォーメーション)サービスを提供しています。
企業の捉え方一つで、実は推進できるDX。
各企業によって異なるDXを具体的な導入事例を交え、株式会社ダイコーIWS代表取締役社長 山田茂之と株式会社L is B代表取締役社長CEO横井太輔氏がさまざまな視点で語りました。

山田

ダイコーIWSは、大興グループの基幹業務とネットワーク・インフラ系の基盤構築と運用保守を担当する部門と首都圏を中心とするビジネスソリューション事業部でしたが、分社化するかたちで、2017年7月に設立しました。本社は広島ですが、私はお茶の水にある大興グループの東京本部にいます。
新しい会社なので、平均年齢が31歳ぐらいと若く、会社のキャッチフレーズは「イキイキわくわくスマイル」。IWSの頭文字から作った造語です。「I」はイキイキ。海をイメージした青です。「W」はわくわくなので、熱い思い。それと、ご当地のカープをイメージした赤。スマイルの「S」は緑。広島は緑が多いところなので。女性や若い人たちから好感を持ってもらえるようにとの願いから作りました。

横井

広島には、出張でよく行く機会がありますが、球場のすぐ近くのローソンが赤くてビックリしました。広島カープを愛する想いは、御社にも込められているんですね。
私どもは、東京が本社ですが、大阪と福岡に拠点があり、開発拠点は、四国の徳島県です。私も含めて、創業メンバーの前職は、徳島県が本社の会社でした。


山田

徳島で物づくりをしているのは、珍しいですね。

横井

私ども「L is B」は、小さいベンチャーの会社からスタートしましたが、4拠点で展開しているので、エンジニアを中心にずっとリモートワークをしています。チャットを手がける会社なので、業務を始める前、休憩時、始業終業の合図も、チャットをうまく利用していて、部署間の連絡もチャットでグルーピングをしながら、お客様からの問い合わせも対応しています。
当社の「direct/ダイレクト(以下、direct)」というサービスは、30万人ぐらいの人に使ってもらっていて、私のことは知らなくても、「direct」のことは知っている。そういったことに私たちが関わっていること、30万人の働き方改革に、少しでも貢献できるのではないか、ということで、社名をL is B 「ライフ イズ ビーイング」と名づけました。スローガンは「アイデアとテクノロジーで、人々を笑顔にする」です。

山田

世の中でDXに関心が寄せられる中「どうすればDXができるのか」中小企業の経営者の方が、よく理解していないのが現状だと思います。IT化とDXは違いがあって、ITは手段だと思います。広島でも、企業のトップから「わしんとこは、どうすりゃDXができるんや?」と悩みや相談を受けますが、社長がトップダウンでやらないと、DXは難しいと感じます。

横井

会社の風土を変えるのは、トップダウンです。「やりましょう」と指示をして「分かりました」と腹に落ちる人が、どれだけいるかというと、組織が大きくなればなるほど、ちゃんと伝達しないし、間違って伝わる。組織の上からも下からも、どちらからも協調していくのが大事だと思います。

山田

中小企業の経営者は、設備投資というものに、すごく敏感です。Kintone(キントーン)を例にとると、エンドユーザーが自分で使えれば一番良いのですが、ただそれが難しいということで、我々が伴走型支援をしていて、固定額を頂いて、Kintoneの開発を行っています。これが経営者の方々からウケています。
例えば、老人介護の施設経営のケースですが、施設に入るとき、預り金というシステムがあって、入所者の小遣いを管理するわけです。エクセルで事務の方が管理しているのですが、金額が合わないんです。使ったお金がどこにいったか分からないとか、手元の金額と出納簿の金額が合わないなど、トラブルになるんです。エクセルでは手間暇がかかるということで、Kintoneを使い、管理できる台帳を用意して、そこに施設内のATMを設置し、Kintoneを連動させ、金額が管理できる小さなシステムを作ったら、好評でした。

横井

企業の中でもDX担当者は、なんとなくITに詳しい方が多く、DXをするとなると、トランスフォーメーションなので、抜本から変えようとする。しかも、DXに投資できる会社というと、儲かっているからできるわけですが、事業がうまくいっている会社が、抜本的に変える必要はないわけです。今のやり方がうまくいっていて、儲かっていて、それで設備投資をする。そのやり方を変えるのは、自己否定になるので相当勇気がいるはずです。
ジレンマがあるのに、それができるのは大企業だからなんです。
何百、何千人と人がいるので、ちょっとコストを変えるだけで、削減の効果が出るわけです。
他方で、中小企業は規模の経済が働かないので コスト低減につながりにくく、また大規模に投資するための費用捻出が困難です。

今、kintoneの話を聞いて「なるほどな」と思ったのは、初期費用がいらなくて、簡単に作って、簡単にやめられる。こういったものが中小企業にとって、ベターだと思いました。設備投資がほとんどかからないサービス利用型(SaaS)をうまく活用できるのが、中小企業のDXには最適だからです。

山田

トップダウン、つまり経営的な力が必要なことだと思います。ボトムアップではDX化できないと感じます。
国がDXを推進していますが、広島県はDX先進県を目指して、知事が旗振りをしています。しかし、実際には、いろんな市町村では、まだデジタル化できていない業務が多々あります。行政は、住民基本台帳がひとつの柱で、まだまだ遅れています。世界の中で、日本の行政のデジタル化はすごく遅れている気がします。まだクラウドを認めていない行政もあるのです。クラウド化せず、あくまでもオンプレのサーバー内にデータがないといけない。このあたりも、いい悪いは別にして、世の中の流れとは違う気がします。

横井

行政の取り組みでは、当社はdirectをふるさと納税の会社にOEMで提供します。北海道から沖縄まで、1700の自治体のうち、1160、全体の7割弱で使ってもらっています。LG-WAN(ローカルガバメントワイドエリアネットワーク)は、自治体専用の回線ネットワークですが、その中で動くdirectを作りました。それをOEM(相手先ブランド)で提供したところ、DXをやりたいという要望が多かったです。電話、紙、メール、FAXではなく、チャットをやりたいということで、一気に広がりました。

山田

DXもITも、経営者の方からみれば、ある意味一緒なんです。変革だとか、改革だとか、結果であって、ささいなことが改善できれば改革なんです。変にこだわる必要はないと。あまり敷居が高い話ではないと思います。
同じような話になりますが、DXを解決するための手段のひとつが、ITだと思っています。あくまでも手段であって、ITも幅広いです。DXというと、2025年の問題をはじめ、いろんなことが作用しています。人不足の中で、デジタル化して、変革していかないと、労働人口の減少が現実なわけです。DXは、いろんなマーケティングの中で使われているワードというイメージです。

横井

おっしゃるとおり。DXはマーケティング用語であり、IT業界が売り上げを上げるための標語だと思います。AIもそうですよ、提供する側がいうのもなんですが、結局、言い方を変えているだけです。昔は、ナレッジマネジメントみたいなこともありましたけれども、結局、企業には目的がありますよね、成長とか収益だとか信用だとか。目的を達成するために使う道具、手段がDXだと思います。
DXのXは、トランスフォーメーションですから、デジタル(D)を使って、今までのやり方を抜本的に見直す。例えば、私たちも「direct」というチャットツールを提供していますけど、DXのためにやっているわけではありません。コミュニケーションをデジタル化したことによって、今までできなかったことが短時間で成果が出るようになるんです。
「direct」には、チャット機能に加えてタスク機能があって、建設現場でのタスクをチャットツールと連携したアプリにしたんです。機能を追加した当初は、お客様から喜ばれたのですが、現場の人たちはあまり使ってなかったです。「紙のほうが便利じゃん」という理由でした。IT業界はなんでも紙を非難して、デジタル化するけれど「もし紙が今、発明されてたとしたら、iPadより便利だと思わない?」と言われて、ぐうの音も出ませんでした。
だって、電源もいらないし、書いて捨てられて、コストもタダみたいに安いし。
その話にヒントを得て作った新機能が、現在はタスクを印刷できる機能です。これは紙に印刷すると自動的にタスク毎にQRコードが生成されて、報告時にはQRからタスク完了の登録が簡単にできるようになりました。
紙とデジタルの融合を意図して機能追加したら、飛躍的に使っていただけるようになりました。
つまり、なんでもかんでもツールとかデジタルに、目的もなく取り組んでいて、猛進してしまうと、結果が出ないという一例でした。

山田

横井さんは、建設業を相手にマーケットを開拓されていますが、建設業は、すごくDX化する宝庫、宝がたくさんある気がします。DX化における、BIMについて、どう思いますか?

横井

BIMとは、ビルディングインフォメーションモデリングの略称で、建設に関わる情報を3次元の立体図面(BIM)に集約していくことを言います。平面図よりも立体図のほうがシミュレーションしやすい利点がありますね。
あと、ビルを竣工したときに、お客様に紙のマニュアルを渡すそうですが、膨大なファイル数になるので、あとで見返すのが大変ですし、置き場所にも困りますよね?それであれば、BIMのデータとしてお客様にお渡ししたほうがいい、という考えも理解できます。

山田

そうでしょうね。

横井

DX人材を採用することは、当社も厳しい状況ですが、ユニークな採用方法をとっているそうですね?

山田

まだまだ発展途上の会社なので、採用には力を入れています。大興グループとして「D-Tech Farm」というプログラムをやっています。未経験者を育てるプログラムです。文系でもOKで、入社後に教育をします。韓国の就職支援プログラムをやっています。韓国は就職率が良くないので、国が支援をして、未経験者のIT教育を国の予算で行っています。そこに、我々がノウハウを提供して、教育プログラムを作っています。韓国政府と一部の教育団体とコラボして、2017年から50名ぐらい、韓国の若者を招聘し、一緒に仕事をしています。コロナ禍ダメージもありましたが、現在でも20数名います。
また「D-Tech Farm」を基軸にしながら、リクルーターがこまめにアナログ的に学校まわりをしています。一方で、WEBを活用したリモートで会議や打ち合わせが増える昨今ですが、リクルーティング的にもWEB活用は必須です。

横井

当社でも、大学と提携していて、学生にインターンで来てもらい、プログラムを教え、そのまま採用した実績があります。

山田

当社では教育委員会からの「教育専門技術研修」という制度を受入しており、ある社員の高校時代の担任だった先生が、夏休み1か月の間、来られたことがあります。教え子だった社員が当日、入社2年目だったんですけど、Javaも使いこなしていました。先生に横に座っていただき、1か月間一緒に業務を行いましたが、高校のころとは、逆転現象なんです。その社員は、実務でJavaを使っていますので、教育で使ったJavaではないわけです。そんなことも起きています。

横井

今回は、東京・文化放送で対談させてもらいましたが、本当は、広島に伺って、行きつけの店でランチも食べたかったです。

山田

是非お立ち寄りください、タイミングあえば、ぜひ。我々の会議室をお貸ししますので。

横井

そのときは、ぜひよろしくお願いします。

株式会社ダイコーIWS
代表取締役社長

山田 茂之

1959年広島県生まれ
マンパワーグループで常務執行役員本部長を歴任後
2015年に大興に入社。
2017年にダイコーIWSへ転籍し、代表取締役社長に就任。
2019年、大興の取締役に就任。現在に至る。

株式会社 L is B
代表取締役社長CEO

横井 太輔

1971年大阪府生まれ
大学卒業後、大手ソフトウェアメーカーで営業、商品開発などを担当。
独立後、2010年9月、株式会社L is Bを創業
代表取締役に就任し、現在に至る。
Twitterアプリ「Feel on!」の開発を経て
建設業や小売業向けのビジネスチャット「direct/ダイレクト」をリリース。
東京・文化放送のラジオ番組「現場DX研究所」のパーソナリティとしても活躍中。

DDXDAIKO DIGITAL TRANSFORMATION SERVICE

大興グループの長年にわたる業務受託の実績から誕生した、
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